『HAKANA』レビュー本編

以下長めの私視点の感想です。
ネ タ バ レ につき観劇前の方はお読みにならないほうが良いです。

[:hide:]

まずはこの物語についての私なりの解釈を。
儚は汚れのない人間の心の象徴、対する鈴次郎は汚れた人間の心の象徴。
神様と呼ばれる姫はその汚れた心の鈴次郎に味方する。
でもいざという時に手のひらを返して見捨ててしまう神と思われた姫は神ではなく悪魔だった。
邪(よこしま)な心で身を持ち崩す人はそんな風に神に見せかけた悪魔に魅入られた人。
そして汚れのない心(の象徴である儚)が消えて残された鈴次郎は・・・という
歌舞伎にありそうな『所詮人間って奴は・・・』っていう揶揄が
この物語の根底にあるように私は思いました。
きわどいセリフや設定が多くまた主人公ふたりの絡みの場面も情感たっぷりなので
表向きは色恋のお話ですけどね。
作の横内さんも“「恋」と「愛」を書き分けた恋愛劇”とおっしゃってますけども。

実際のお芝居もふたりの泣きのシーンがほんと多いです。ちょっと鼻につくくらい。
美貴ちゃん演ずる儚もぐすっぐすってよく泣いてました。特に後半は。
(ここでは儚がお寺を出て以降を後半とします)
儚の制止をふりきって賭場にはしる鈴次郎っていう一幕目終幕前の場面。
それはそれで終わりと思ったら二幕目もまだ同じ場面からっていう二幕目の冒頭は
若干腑に落ちなかったです。
美貴ちゃんは難しい役柄に果敢に挑んでました。
いかんせんバリエーションが少ないと事とか普通に話す場面での発声は今一歩な感じはしましたが、
前半の花道をダダダーーーって駆けて来て鈴次郎にじゃれるとことか
花魁の場面には魅了されました。
歌も素晴らしかったけどできれば生で聴きたかったですね。演じながらは難しいのかな。
役といえば青鬼には泣かされたなぁ。
演ずる山本 亨さんは『何日君再来』で台湾マフィアのボスをやられた方。
どちらも味わいのある悪役ですね。
ホリ・ヒロシさんの操る人形演ずる短気で焼き餅焼きな姫も怖かったぁ;
セットや照明などの舞台効果の演出もシンプルながら良かったですね。
木々が風でざわざわするとことかほんと幻想的でした。最後の場面もほんと美しかった。
ポスターにちりばめられたモチーフはちゃんと意味のあるものでした。
あそこでウルっと来てしまったのはあの演出のおかげもすごいあったと思います。
印象的なセリフにベンベンっとがぶる義太夫も歌舞伎を見てるような気分にさせられた一因かもしれません。

観客は意外にも一般の方が多かったですね。
ホリ・ヒロシさんファンのご夫人がヲタばりにポスターを写メしてたりね。
明治座はじめていったけどあそこはあれですね、ご婦人方のアミューズメントスポットって感じなのかな。
土産物屋さんがいっぱい並んでるのが面白かったです。

以上いきおい一日で2回も見てしまったHAKANAの感想&観劇記でした。

【引用始まり】 ---
2008.4/19 昼の部/夜の部

明治座NEO時代劇『HAKANA〜「いとしの儚」より〜』

作:横内謙介 演出:杉田成道

出演:
儚/藤本美貴
鈴次郎/大口兼悟
青鬼/山本 亨
鬼シゲ/住谷正樹レイザーラモン
地蔵菩薩(殿様)/出渕 誠(レイザーラモン
ゾロ政/村杉蝉之介
妙海(瓦版屋)/松澤一之
女郎屋お鐘/片岡サチ
賽子姫/ホリ・ヒロシ操る
三木松/工藤潤矢
【引用終わり】 ---