6/23 コクーン歌舞伎『三人吉三』

初の歌舞伎観劇に行ってきました。
といっても本格的なのじゃなく渋谷Bunkamuraシアターコクーンで上演された
いわゆる“コクーン歌舞伎”です。

以下つらつらと覚え書き的感想を。
長文&終演間近ですが ネタバレ有り なので隠します。

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もう一口にいってしまうと“次元が違う”の一語に尽きるかも。
役者のお芝居から演出から舞台美術からなにからなにまで。
現代演劇と原点が違うっていうのかな。
原点ってつまり江戸時代に培われた伝統ってやつ?
それが大衆向けに昇華されてるのだから面白くないわけがないって感じ。
もしかしたらちょっとやそっとの現代劇だったら
このお芝居の前ではかすんでしまうかもしれません
う〜〜む・・・

実際歌舞伎もコクーンに行くのも初めてだったんですけど
まず劇場のしつらえからして違います。
劇場の開場はお囃子で告げられ、
売店では数種類のおだんごやお弁当が売られ、
そして一階席の前ブロックは座布団のしかれた桟敷席で、
まさに芝居小屋といった趣。
私はイス席だったんですけどね。

そしてお芝居が始まってこれまたビックリ。
なんと最初の登場人物は客席一階中程の上手下手の扉から登場し
お芝居しつつ舞台に登って行きました。
つまり客席通路を花道に見立てていたのです。
この演出はお芝居全編でみられたものでした。
この他にもかしこまった様式にこだわらない楽しくて粋な演出が随所にありました。
時には桟敷のお客様の間を通り抜けたり、お客さんのバックを小道具にしちゃったり。

にしてもあんな間近で歌舞伎衣装を着た役者さんが見られるなんてほんと贅沢。
ちなみに私もすぐ近くで暗転に浮かび上がる白塗りの色男役・勘太郎さんを
拝見したのですが、とんでもなく色っぽい色男っぷり。
もちろん歌舞伎お決まりの見栄やカッと目を見開くポーズ、
七五調のセリフも織り込まれていました。
この演目でいったら
“こいつぁ春から、縁起がいいわい”(じゃっかん違うかも)
が結構有名なのかな。
こーゆーセリフや決めのシーンの後には必ず間があります。
どーだ!みたいな感じで。
でたいがいそのあと“中村屋!”みたいなかけ声がかかります。

舞台美術や照明も素晴らしかったです。

“一幕”“二幕”は黒を基調にした暗闇の世界。
江戸の頃は夜なんて月でもなければほんとに真っ暗闇だったらしいのですが、
その様が一番感じられたのが竹蔵裏での場面です。
真っ黒で大きな土壁に黒い木戸、同じく黒く塗られた竹が一束立てかけられ
それを平行四辺形の四角い強い照明が3分の1ほどを照らしているので、
光のあたってないところは観客も目に慣れず暗くはっきり見えません。
その感覚はまさに暗闇の夜道をあるく目に見える風景そのもの。
大金でももってたら盗賊を恐れるのも無理はないって思えてしまう。
でもって怯えるその人は盗賊に出くわしてしまうわけですが、
そういう暗闇の持つ恐怖感を感じたのです。
唯一歌舞伎役者でない笹野高史さんの見栄も独壇場も迫力ありました。
思えば彼のひとり語りで物語のドロドロした行き場のない世界に
引っぱり込まれたのでした。
盗賊三人が主人公の『三人吉三(さんにんきちさ)』の物語そのものは
結構重苦しいテーマでほんと辛いお話なんです。

そして一転クライマックスの“大詰め”では、
大量の吹雪が舞台をあっというまに真っ白な雪景色にしてしまいました。
その中に浮かび上がる三人の衣装の色の美しい事ったらなかったです。
場面としてはほんとは悲しい場面なんですけど、魅了されました。
櫓の上でのお嬢吉三の見栄もこれまたカッコ良かったです。
3対大勢の立ち回りも迫力と言うより静かに美しく繰り広げられました。
そして結末、ここで流れた音楽はなんと椎名林檎さんの書き下ろし。
勘三郎さんが頼んで書いてもらったそう。
これがまた妙に合うんですよね。人の世の儚さが伝わって来ました。

終幕で客席はスタンディングオベーション
2回幕が上がり出演の役者の方々がそれに応えました。
3回目に上がったときにはコミカルな夜鷹役の方が雪をほうきで掃いてて
笑わせてくれました。

観客はほんと女性が多かったです。
私の席の回りだけでいうと16席中男性は3人でした。
無形重要文化財って言われると仰々しいけど、
芝居見物は昔も今も女性の娯楽なんですね。
歌舞伎座にも行ってみようかな・・・
てゆーかさ・・・
普通の現代劇とか物足らなくなりそうなんだけど;
折しも今日は某所の当落じゃん?
私某公演ガッツリ申し込んじゃったんだよね
どんだけ見るんだ自分

【引用始まり】 ---
コクーン歌舞伎 第8弾
三人吉三(さんにんきちさ)』
6/23(土)昼の部
Bunkamuraシアターコクーン

河竹黙阿弥 作
串田和美 演出・美術

和尚吉三   中村 勘三郎(冒頭太った金貸しと二役)
お嬢吉三   中村 福 助
お坊吉三   中村 橋之助(冒頭侍と二役、全然解らなかったw)
十三郎    中村 勘太郎
おとせ    中村 七之助
研師与九兵衛 片岡 亀 蔵
土左衛門伝吉 笹野 高 史

※歌舞伎としての題名は『三人吉三廊初買』というらしい
 2001年から6年ぶりの再演だそう
【引用終わり】 ---