音楽劇『三文オペラ』 レビュー

4/11、昼公演を見ました。
ちょっと時間が空いちゃいましたがその感想を。

※ ネタばれあり。鑑賞前の方は読まないことをおすすめします。※

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この劇をひも解くヒントはあのメイクにあるのではないかと思った。
白く塗られた顔に目のまわりだけ黒々とさせたまるで死人の様な。
そしてセットも舞台の裏側を隠しもしない。
むき出しの建物そのもののコンクリート壁や仕掛けのワイヤーが丸見えである。
床も緞帳すらも木のベニア板そのままである。
普通の舞台だったらあり得ない。裏方をあんな風に見せるなんて。
つまりあのお芝居はこの世の話ではないのだと思った。
人の心の普段は見えない影の部分。どろどろした欲望うずまく世界のお話。
オーラスのキラビヤカさはノー天気そのものではないか。
そう考えるとメッキが絞首刑を瀬戸際で免れたのもつじつまがあう様に思う。

乞食が乞食の稼ぎをピンハネし、泥棒が泥棒の稼ぎをピンハネする。
が、どっちもそもそも他人の金だ。
紙に書かれた説教じみた言葉はくしゃくしゃと投げ捨てられる。
一見ただの箱入り娘のポリーはなんと悪党相手に凄むのだ。
なんて無節操な世界、でも現実じゃないのか。
でもどっちが良いんだろう?
ひょっとしたらあんな感じの方が世の中の気楽なんじゃないか。
今の世の中の方が窮屈なんじゃないだろうかと、
見終わって思ったのだった。

なっちは上に書いたように一見きゃぴきゃぴな女の子が豹変する
ギャップが見せ場の役だったんだけど、なかなか様になってたよ。
というかなっちのキャラのままのハマり役だったと思う。
って行ったら語弊があるか・・・
歌もいっぱい歌ってたけど独特なお芝居なので、
歌を聴くという感じではなかったかな。

音楽よりもその世界観の方が印象に残った舞台でした。

【引用始まり】 ---
【公演データ】
音楽劇『三文オペラ
2009年4月5日(日)〜29日(水)
bunkamura シアターコクーン

作:ベルトルト・ブレヒト
音楽:クルト・ヴァイル
翻訳:酒寄進一
演出:宮本亜門
出演:三上博史(窃盗団親分・メッキ・メッサー)、秋山菜津子(娼婦のジェニー)、
デーモン小暮閣下("乞食商会"ピーチャム)、安倍なつみ(ピーチャムの一人娘ポリー)、
松田美由紀(ピーチャムの妻)、田口トモロヲ(警視総監ブラウン)、
明星真由美(ルーシー)、米良美一(モリタート歌手) ほか
【引用終わり】 ---