『「何日君再来」イツノヒカキミカエル』レビュー


 
 脚本:羽原大介(はばら だいすけ)
 演出:岡村俊一(おかむら しゅんいち)

正直、吉澤さんが出なかったら見に行かなかったであろう
『Asian Beat Fiction「何日君再来」イツノヒカキミカエル』を見て
不覚にも涙してしまった。
以下、『「何日君再来」イツノヒカキミカエル』(5/20・マチネ)の
レビューです。
(※ネタバレしてます、ご注意を!)

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音楽を政治的に利用する全ての体制を本気で憎いと思ってしまった。
体制とはこのお芝居で言うなら、
中国共産党・台湾マフィア・中国民主化運動を煽動する組織、
この三つである。

そして劇中リンが言った
『体制は人民の命くらいなんとも思ってない』
という主旨の言葉。
はからすも今の世界で大国のしてる事がそれを証明している。
国だけではない宗教で括られた体制も同じだ。
もしかしたら体制同士の争いで生まれる悲劇の連鎖は
そこから始まってるのでははいだろうか。
体制の指導者がひとつの命も大事にする人であったら・・・
そう思ってしまった。

舞台からそのメッセージの断片が
役者の芝居からセリフの言葉から照明や音楽・SEを含めた演出から降り注いで、
まさか泣くなんて思ってなかったのにホロっとしてしまった。
哀しいというより悔し泣きである。
ガンガン押し付けるだけでない、
動静を織り交ぜた演出に引き込まれたのだと思う。
劇中歌が政治的メッセージなど有り様もない純然たる歌謡曲だったのも良かった。

吉澤さんの演じた役どころは
物語の中では一番平凡な(ルックスの設定もホントはそうなのかなと)
一概の中華屋の店員。
たまたま居合わせて歌姫の替え玉としてスポットライトをあびて浮かれ
なすがままに騒動に巻き込まれ慌て怯え、
最後には主人公の背中を押してリンを救ったヒロイン。
つまりこのお芝居の中では出番も多く重要な役なのだ。
ピンチヒッターでちょちょっとこなせるような役ではまったくなかった。
さすがに稽古不足はあったかもしれない。
もう少し吉澤さんの中で役がこなれれば、あるいは発声の仕方を学べれば、
場面毎のセリフに幅も抑揚も出たのではないだろうか。
そういう意味ではちょっとハラハラして見てた。
だって他の役者さん上手かったものね。
2幕終盤の主人公を促す場面は良かっただけにそう思ったのだけど。
ルックス的には梨華ちゃんの方が適役かなと。
だって吉澤さんのルックスは典型的な東洋人とはちと遠い。
せめて髪が黒かったら・・・と思った。

でもね、吉澤さんすごいラッキーだったんでない?
って思ったくらい感動した。
もうあと数回で千秋楽なんてもったいない。
梨華ちゃんのも見れば良かった。